ただ、笑うことしかできない。


君がいなくなった。
もう会えない。
そうなんだ。と、静かに理解した(つもりの)私がいた。
堪えきれなくなった涙は、思ったより早く収まった。

ゆらゆらとぼやける視界。
頭に思い浮かぶのは、
今日はコンタクトをしてなくてよかったな。
こんなに泣いたら、流れ落ちちゃうよ。
なんて。
どうでもいいこと。

あのこを失った時とは違って、取り乱したりはしない。
大人になったから?
覚悟していたから?
違う。逃げていたから。

どんどん弱っていく君がいて、
何もできない私がいた。
大丈夫と根拠のない言葉を口にしながらも、
いつの間にか私は君を避けていた。
忙しいなんて、理由にならない。


「変わらないね」と声がする。
幼い私が、大人になった私を見ている。
諦め顔で。
苦しそうに。
泣きそうな顔で笑って。


あの時誓ったはずなのに。
苦しんでるあのこから目を逸らした時に、
ひんやりとしたあのこに触れた時に、
確かに誓ったはずなのに。

君から逃げていた私は、冷たくなった君を見ていない。
そして、君の眠る場所へ行く勇気もない。
大人になって、何が変わったというんだろう。
泣きながら手を合わせた、7年前の私のほうがずっと大人だったよ。

大好きだったとか、7年半ありがとうとか、
私にはそんな綺麗な言葉を言う資格なんてない。
きっと、君にさよならを言う資格だって。
だから、ただ、笑うことしかできない。



07/12/06

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