UTOPIA


ある日、新しい神様が地上に降りてきました。
地上では人々が争い、荒廃した土地が広がっていました。
心を痛めた神様は、争いをなくそうと人々の話を聞きました。

「貧しいから争いがおこるんです」
「もしも豊かなら、奪い合うことなんてしません」

その声を聞いて、神様は土地を豊かにしました。
その年は大豊作でした。次の年も、その次の年も。
人々は、とても幸せそうでした。
それを見た神様は、とても幸せでした。


けれど、また争いがおこりました。
誰かが困っていても、誰も助けようとはしないのです。
心無い行いに、困っている人たちが怒り出しました。

「豊かだから、助け合いの心がなくなるんです」
「貧しかった頃は助け合って生きていたのに」

その声を聞いて、神様は土地を枯らしました。
人々は、寄り添い合うように慎ましく暮らしました。
貧しいながらも、人々は豊かな心で過すことができました。
それを見た神様は、とても幸せでした。


けれど、また争いが起こりました。
他人より少しでも良い暮らしをしたいと願った者達が、
力づくで物を奪い始めたのです。

「早く元の土地に戻してください」
「また豊かになれば、きっと争いはなくなります」


そんなやり取りを数度繰り返し、神様は考えました。
争いがなくならないのは、環境のせいではありません。
神様は、人間の願いを叶えるのを止めました。

「お前のせいだ、あんな余計なことを言うから」
「いや、お前のせいだ」

人々は口々に罵りあい、争いが起きました。
もう願いを叶えてくれる神様はいません。
みんな自分のせいだと認めたくないので、誰かのせいにしました。
正義も悪も、得られるものすらないその戦いは、
いくら季節が廻っても終わりそうにありませんでした。


それからどれだけの時が流れたのでしょう。
再び神様が来た時には、人間は誰もいませんでした。
そしてそこは、桃源郷を思わせる平和な地になっていました。



小説に入れるか迷ったけどこっちで。
07/10/28


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