環境問題で10のお題


--無知ゆえの過ち--

なにも知らなかった僕は
何度も君を傷つけた
君を傷つけたことすら分からなかった
今なら分かるのに
君は遠くへ行ってしまった

(僕の心がゆっくりと濁っていく)


--透明な汚濁--

何もすることがない休日に
やけに広く感じる1LDKに
肺がちくちくする息苦しさを覚えた
軽く咳込むと
膝小僧に雫が落ちた

透明なはずのそれは
薄ぼんやりと濁っているように見えた

(じわりと、視界が揺らめいた)


--じわり、溶けた--

ぽつぽつという控えめな音が
ざあっと自己主張し始めて
やっと洗濯物を干しっぱなしだと気づいた

ベランダから戻ってきたころには
乾いたはずの涙が、雨に溶けていた

(何もかも、溶けて見えなくなってしまえばいいのに)


--何も見えない--

昼までの晴天が嘘のように
雨がフォルティッシモで歌っている
窓からは、何も見えない
誰からも、僕は見えない
そう思ったとたん
僕の虚勢は、ぽたりぽたりと剥がれ落ちた

(綻んだのは、必死に守ったもの)


--守護者の不在/広がる綻び--

20年以上生きてきたけれど
自分がこんなに泣き虫だなんて思わなかった

もう君が直してくれないから
まぶたの堤防が決壊し続けているんだ

(この水のように、想いはただ溢れるだけ)


--溢れる水--

足を動かすと
ぱしゃりと音がする
それはふやけた足の指を覆い隠して
膝もへそも腕も首もつむじも
全て飲み込んで
上下の感覚をなくした僕は
そのなかでゆっくりと息絶える
その瞬間、僕は確かに幸せだった

そんな白昼夢

(どうやら、壊れたのは堤防だけじゃないらしい)


--壊れる秩序--

ぱらぱらと
君の存在で保っていた平常心が
散らばっていく
足元が崩れるような感覚から逃げるように
君と見た青を求めて車を走らせた

(輝いていた日々の、ほんのカケラでいい)


--青い輝き--

たどり着いた場所は
僕の思い出とはだいぶ違っていて
白い砂浜も
秘密基地を作った木々も
走り回った草原も
何もかもなくなっていて
ただ、無機質な灰色が広がっていた

それでも
全てを生み出した青は
あの日と同じように穏やかに凪いでいた

(静かに微笑む君のようだ。と、思った)


--静かな侵食--

沈んだ心が塗り替えられていく
それは微細な変化
少しずつ変わっていく自分
それは恐怖

目を瞑って変化を拒むか
目を開いて変化を認めるか
なかなか決心がつかないけれど
ただひとつだけ言えるのは
目を逸らしはしないということ

(過去に縋るか、未来を求めるか、決断のときは今)


--変わらない過去、変えられる未来--

君と過ごせた幸せ
君がくれた愛
君を失った痛み
どれも僕を構成する、大切な“過去”

風化する前に全てを拾い上げて
何もかもを飲み込んでしまおう
そしたらきっと、また歩き出せる

さようなら、愛しい人
さようなら、昨日までの僕

(過ちを糧にできるから、人は生きられるんだと思った)


09/09/19

戻る