008 愛人
「貴方の一番になれなくてもいいの」
貴方はその言葉に含まれる狂気に気付かない
「貴方の一番になれなくてもいいの」
にこりと笑う私から目を逸らして
床を見てふっと自嘲する貴方
そうやって目を背けているから
私の笑顔の裏が分からないのね
分からない方が幸せだから
無意識にそうしているのかもしれないけれど
「貴方の一番になれなくてもいいの」
順位なんて相対的なものでしょう?
なら、私より順位が上の存在を消せば
いつか私は貴方の一番になれる
「貴方の一番になれなくてもいいの」
「――今は、ね。」
06/07/20
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