025 気のせい
小さい二つの足。
これがあれば、どこにだっていけると思っていた。
自分で道を作って、好きなところへ行けた。
道を間違えたって、迷子になったってかまわなかった。
その分、素敵な景色に出会えたから。
でも、どうしてだろう。
だんだん道を間違うのが怖くなったんだ。
いつのまにか、舗装されたレールの上を走るようになった。
誰かの敷いたレールの上なら間違う事もない。
歩くよりも早く進める。
僕は自由に走る足を失い、
代わりにレールの上を走る車輪を得た。
だけど、この虚しさはなんだろう。
いや、こんなのきっと気のせいだ。
間違わないのはいいことだ。
早く進めるのもいいことだ。
そうに決まっている。
(ああ、僕は誰に言い訳してるんだろう)
〜ある青年の手記 無機質な筆跡〜
07/03/30
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