062 狂う


お前は狂っているな。
「そんなこと、ずっと昔から分かっていたよ」
治す気は?
「昔はあったさ。でも、気付いてしまったんだ」
何に?
「この狂気は僕そのものなんだ。狂っていない僕は僕じゃない」

やっぱり狂っている。
「そうだよ。……君も僕から離れるのかい?」
離れようがないじゃないか。どうせ逃がす気はないんだろう?
「さあ、どうだろうね」
手錠だの足枷だの、一体どこから手に入れたんだ。
「そりゃもう、君のために散々探し回って見つけたんだよ」
キモい。
「酷っ!」

まったく、お前は本当に狂っているよ。
「だからそう言ってるじゃないか。ところで、それでも笑っている君は?」
……同類、ってところじゃないか?
それより、お前の背後のやかんがうるさいんだが。
「ああ、本当だ。じゃあ、お茶にしようか」
俺は猫舌だからな。ちゃんと冷ませよ。

「あっつ! あ、お湯が、ストーブの火が!」
……ちゃんと床拭いとけよ、アホ。


淡々とした、(異常な)日常の中の狂気が書きたかった。
07/03/14


戻る